スーパーゼネコンの一次請けとして鳶工事業を営む佐々木架設株式会社。2017年にベトナムから技能実習生3名を採用。その後、技能実習を満了した3名の在留資格を切り替える形で特定技能受け入れをスタートさせました。他の一次請け会社に先駆ける形で外国人材の受け入れを開始し、今では他社から受け入れに関する問い合わせも絶えないという同社。優秀な人材を惹きつけ定着を図るためになにが必要なのか?外国人材への向き合い方や具体的な取り組みについて鈴木社長にお話を伺いました。年1回の一時帰国費用を会社で補助するなど待遇を良くするのは当たり前特定技能外国人を受け入れたきっかけを教えてください。鈴木社長:人手不足ですね。建設業では日本人が本当に採用できなくなっています。うちは、10名も20名も採用したい規模の会社じゃないから、毎年1名採用して確実に定着してもらえれば良いのですが、それでも厳しいですね。採用も難しく100%の定着も不可能だとすると、今後、会社を成長させていくためには外国人材の手を借りていかないといけない。御社は給与水準も高いですが、それでも採用、定着は難しいんですね。鈴木社長:そうですね。高校に求人を出すと進路指導の先生とかから「こんなに給与高いんですか」と驚かれます。実際に定着している人たちはそこに魅力を感じてはくれていますね。でも、いま、東京に実家があってそこで暮らしている若い子って、お金だけじゃないんですよ。まあ、特に働かなくても布団があってご飯も出てくるみたいな環境だったら、わざわざ大変なことしてお金を稼ぐっていうことの意義が分からないのかもしれないですね。いま、外国人材を含めて平均年齢45歳ぐらいですけど、日本人に限ると高齢化は進んでいます。若い日本人だと21、22歳とかが3、4名いる程度ですね。それもハローワークとかではなく、社員からの紹介で採用に至りました。3、4年働いてうちを気に入ってくれた社員が、知り合いを紹介してくれるという流れですね。だから今は、紹介した人材が3ヵ月辞めずに働いたら、紹介してくれた社員にボーナスとして30万円支給、という取り組みをしています。社員の方に「紹介したい」と思われる就労環境を提供できているからこその取り組みかと思いますが、それでも日本人だけでは回らないという判断で特定技能を受け入れられているということですね。鈴木社長:そうですね。とはいっても、うちの場合は、技能実習で入ってきて3年満了後にそのまま特定技能に切り替えて継続就労している方しかいません。まだ、一から特定技能で働く方や他社で技能実習を満了した方は受け入れたことがないんです。ただ、技能実習で建設を3年ないし5年経験していて、そのまま建設業で働きたいという方は、一通り仕事を覚えてるし、日本語での業務コミュニケーションも取れる非常に優秀な方が多いんだろうなっていうのは、協力会社さんで働く人材を見ていても感じます。弊社の特定技能外国人はみんな、ベトナムの建設短期大学出身なんです。それでもやはり、技能実習で入社したばかりのころは、完全に初心者でした。大学で知識は学ぶのかもしれないけれど、国によってやり方も違うし、技能っていう意味ではね、もう0スタートなんですよ。文字通り技能実習ですね。特定技能だと即戦力になってくれるから、そこは良い点かなと思います。もっとも、うちの子たちは技能実習の時からめちゃくちゃ真剣で、技術の覚えも日本人の若手に負けてなかったですよ。技術や技能は、やっぱり国がどうこうというより個人差が大きいのかと思いますが、意欲や成長度合いは外国人材の方が圧倒的に高いです。特定技能1号が終わっても、会社としては本当にみんなに残ってほしい。ただ、子供が生まれたり家庭の事情で帰国、ということはどうしても発生します。うちでも結婚して子供が生まれてベトナムに帰国した方がいるのですが、彼もまた日本に戻ってきたいという話が出ているので、家族も日本で暮らしやすい環境をつくれれば、優秀な人材の囲い込みに繋がるのかなとは思っています。働きやすい環境づくりという話が出てきましたが、御社は給与以外でも良い環境を提供されている印象があります。外国人材の受け入れでなにか意識されていることはありますか?鈴木社長:意識してっていうのはあまりないんですよね。そもそも、うちが最初に技能実習生を受け入れた時って、一次請けで外国人材を採用している会社さんってあまりなくて。当たり前の生活ができる環境だけはちゃんと整えようという感じですね。部屋にWiFiを用意するだけじゃなくてポケットWiFiないしSIMカードが入った携帯電話も提供するとか、 月1回くらいは食材を差し入れるとか。建設業で結構ひどい話を聞くじゃないですか。まともな生活環境も用意せず劣悪な環境で働かせるみたいな。そいういことだけは絶対ないように気を付けていましたけど。年1回、外国人材の一時帰国費用を会社が負担するという取り組みもされていましたよね?鈴木社長:はい。それも特別なにかを意識してというより、年1回くらいは家族や友人に会いたいだろうし、仕送りとかしている中で、旅費を自己負担するはきついだろうから会社で出そう、みたいな当たり前の感覚ですね。技能実習だろうが特定技能だろうが関係なくやっています。技能実習にしろ特定技能にしろ外部の機関に支払う費用もあり、給与も決して低くない中でさらに追加で環境整備のためにお金を出すことに抵抗を覚える会社さんも多いと思いますが、、、鈴木社長:高いといっても日本人の中堅どころと同じくらいの金額ですよ。そりゃ、日本人の未経験とか3年程度の経験者を雇うよりは高いけど、それで必要な人材が確保できるのなら当然の投資と考えています。コストじゃなく投資。それに、もともと私が嫌いなんですよ、ケチケチするの。社員が頑張って業績的にもうまくいってるんだからそれで良いだろくらいの感覚です。ほら、そんなに大きい会社じゃないから、ワンマン経営なんだよね笑。まあ、結果的に、うちの外国人材はみんな「佐々木架設が1番だ」と言って、知り合いに薦めてくれています。現場の指導員に手当を付けることで、受け入れる日本人社員の負担に報いる日本人、外国人問わず、働いている社員の満足度が高まり、社員からの紹介で新しい人材を採用できるという良いサイクルができているんですね。一方で、受け入れで苦労されたことはありますか?鈴木社長:正直、ないんですよね。一番最初に技能実習生を受け入れた時に、家を借りたり必要な物を揃えたりは大変だったけど、それが落ち着いた後はもう日本人と変わらない。実際に指導される現場からも不平不満は上がってこなかったですか?鈴木社長:いや、それもなかったです。うちは、指導する社員に手当てを付けていたから。専属で指導することになった社員に、 1名指導するにつき千円の日当ですね。仮に2名指導したら2千円。何名指導するかによるけど20日やったら4万円とか6万円くらい給与が増えるので結構インパクトありますよね。もちろん、現場で指導する上で悩みや大変なことはあったはずなんですよ。最初は日本語力も技能もないところからスタートだから。でも、それが不平不満やクレームに発展しなかったのは手当の効果だと思います。特に、うちの場合は、私が現場に出ているわけではないので、ただ「面倒見とけ」て言っても、任された日本人社員からしたら「なんで、そんな面倒くさいことしなくちゃいけないんだよ」ってなってしまう可能性が高いから、そこは気を付けました。でも、手当がインセンティブになった側面もあるにせよ、それだけではなく、外国人材と一緒に働くこと自体を楽しんでいた社員もいます。師弟関係を築いて、いまでは飲み友達みたいになっています。そういう存在があったことも受け入れがうまくいった要因でしょうね。自社内でもうまく受け入れ態勢を整えられている中で、外部の登録支援機関に求めることがあれば教えてください。鈴木社長:担当者の知識レベルや行動の迅速性ですね。あとは、人材の困りごとを聞けるように母国語で相談に乗れる体制が整っているかどうか。特に、担当者の知識レベルは重視しています。外国人材の受け入れって制度とか複雑だから、コンプライアンスを守って利用していくためには専門的な知識が必要ですよね。こちらとしては、専門家の知見にお金を払っているという感覚なんですよ。もちろん、すべての質問に即答できなくても良いんですが、分からない場合でもすぐ調べて回答してくれるみたいなスピーディーな対応をしてほしいです。外国人材の専門家としての安心感とスピーディーな対応に魅力を感じてリフトを選んでいただけたということでしょうか?鈴木社長:そうですね。協力会社の方から紹介していただいたのですが、正直、最初はホームページとかを見て「胡散臭いな」と思ったんです。で、実際に会って話を聞いてみたら、やっぱりすごい胡散臭くて笑。費用もね、他社さんと比べて安いわけではない。むしろ、ちょっと高いぐらいだけど、何回かやり取りして、知識も確かで対応も速いことが分かってきたのでお付き合いさせていただくことにしました。周りの話を聞いていると、いい加減でサポートもなにもしてくれない登録支援機関さんや監理団体さんって多いみたいだから、外部パートナーの選定は重要だと思いますね。ありがとうございます。最後に、今後、外国人材を活用してどのような組織をつくっていきたいですか鈴木社長:経験者の採用を増やしたいとは思っています。同時に、やっぱりね、外国人材だけで現場を回すっていうのも現実的には難しいから、日本人社員も採用していきたいんです。そのために、給与もそうだし、建設業や当社で働きたいと思ってもらえるような環境づくりにもっと力を入れないといけない。結果として、日本人と外国人が良いバランスで協働できるのが理想ですね。