神奈川県で特別養護老人ホームとデイサービスセンターを運営している社会福祉法人峰延会。反対意見も多くある中で外国人材の受け入れをスタートしましたが、今では10名以上の技能実習生、特定技能外国人が活躍しています。今回は、外国人材の活用を推進された施設長の佐々木様に介護施設ならではの問題や定着のための施策についてお話を伺いました。特定技能外国人は即戦力になる特定技能外国人を受け入れたきっかけを教えてください。佐々木様:日本人がなかなか採用できない、というのが一番の理由です。特定技能制度が創設され、技能実習で経験を積んだ外国人材が転職市場に出てくるようになってきたタイミングで採用を開始しました。弊社でも、もともと技能実習の受け入れをしており、技能実習満了後に特定技能に切り替えて就労を継続してくれている方もいらっしゃいます。はじめて外国人材を受け入れる際に反対の声は上がりませんでしたか?佐々木様:そうですね。やはり最初の受け入れの時は反対意見が多かったです。従業員からも理事会からも反対されました。受け入れには結構お金もかかりますのでね。なので、最初は、私や現場の責任者を中心に「なぜ外国人材が必要なのか」「どのように接したら良いのか」といったことを資料を作り込んで説明をするようにしていました。どのような反対意見があったのでしょうか?佐々木様:日本語でのコミュニケーションに対する不安の声が多かったです。「利用者様と会話できないだろう」「ご家族に利用者様の状況を伝えられないだろう」「救急対応できないだろう」とかですね。あと、技能実習生の場合は「夜勤が難しいのでは?」みたいな声も上がりました。 そういったハードルをクリアするために教育計画を立てて、「何か月後にはここまでできるようにしましょう」というのを明確化することは意識していました。ただ結局は、一番最初に受け入れた人材の皆さんが一生懸命で、頑張ってくれたのが大きかったです。1か月も経つと、受け入れて良かったという雰囲気に変わっていきましたね。彼らのおかげで外国人材に対するイメージが良くなりました。利用者様からも「一生懸命で健気」「頑張ってほしい」といったお声を頂けています。実際に受け入れてみたら当初心配されていたような問題は起きず、しっかり戦力になってくれているということですね。佐々木様:はい。特定技能の場合は、1年程度の介護の経験があることを採用条件にしていますので、短期間で戦力になってくれています。技能実習ですと、日本語がなかなか話せないレベルで入職するので教育に充てる時間が多いですが、特定技能の方は、半年程で夜勤もしていただけるなど、日本人の中途採用の職員と比べても遜色がありません。現在の受入れ状況としては、特定技能8名と技能実習3名になります。国籍はベトナムとインドネシアですが、皆さん、勤勉で仕事に対して一生懸命ですし、熱い想いがある方が多いので、本当に受け入れをして良かったと思っています。ありがとうございます。介護業務には高い日本語力を求められるイメージがあります。コミュニケーションのトラブルは起きてはいないのでしょうか?佐々木様:日本語のコミュニケーションに関しては、そこまで大きな問題は出てないですね。ただ、介護のコミュニケーションで難しいのは「日本語が流ちょうに話せるから良いわけではない」ということです。もちろん、最低限の伝達ができる日本語力は必須ですが、それ以上に、表情や話を聞く姿勢、態度がとても重要になってきます。笑顔で接する、親身になって丁寧に話を聞くといった非言語コミュニケーションですね。もっとも、外国人で文化が違うから指導に苦労することはなかったです。むしろ、介護に対する想いが強く、優しい人材が多くて助かっています。申し送りのための介護記録作成も外国人材にとってはハードルになるかと思いますが、いかがでしょうか?佐々木様:そうですね。記録を書くのはなかなか難しいのですが、 基本的なところはシステムでカバーできていますね。例えば、「誰々が排泄しました」「トイレ行きました」みたいな定型文が用意されていて、ボタン押すと日本語が出てくるみたいな機能があるんです。言葉の壁はだいぶデジタルの力で乗り越えられるようになってきています。キャリアパス作成で定着率向上へ外国人材の定着・活用のために意識されていることはありますか?佐々木様:キャリアパスを作成して、勤続年数や介護技術、介護福祉士などの資格取得と紐づいた給与水準を明示するようにしています。過去に給与条件の認識にずれがあって問題になったことがあるので、キャリアパス作成と定期の人事考課での評価のすり合わせというのは意識的に取り組んでいますね。技能実習や特定技能だけだと期間が限定されていて、キャリアプランも短期間のものになってしまうので、設計が難しいなと感じていますが、いろいろ試しているところです。あと、キャリアパスとも連動しているのですが、外国人材の中からマネージャーを育成する取り組みを始めました。介護技術も日本語力も高い人材に、外国人材のまとめ役として他メンバーの相談に乗ってもらうなどの取り組みをしています。社内で外国人材の相談にも乗れる体制を整えていらっしゃるんですね。そうなってくると外部の支援機関にはどのようなことを求められるのでしょか?佐々木様:社内で相談体制を整えているとはいっても、やはり言いづらいことはあると思うので、「実はこんなことを言っています」みたいな本音をヒアリングしていただけるとありがたいですね。人材が考えていことや悩んでいることを早めに検知して対策をとっていくことで長く働いてもらえたら良いと思っています。人材との距離を埋める手助けを登録支援機関さんにはしていただきたいですね。あとはやはり、人材紹介のネットワークやノウハウを持っている登録支援機関さんが良いです。一から自社で外国人材集客のネットワークを構築するのは難しいので、外部の専門家に頼んだ方が優秀な人材が採用できるし、スピード感も速いと感じています。人材紹介ができて紹介後も人材との関係構築に協力的な登録支援機関が望ましいということですね。数ある登録支援機関の中からリフトを選んでいただけたのも、そういった条件をクリアしていたからでしょうか?佐々木様:はい。募集から入社までのスピードが速かったですね。あと、制度や法律への理解がしっかりしている点が魅力的でした。法律の理解が雑だったり、入社までの準備に手間取ったりする登録支援機関さんも結構いらっしゃいますから。。リフトさんは、最初に営業に来ていただいた時にふわっとした抽象的な話ではなくて、はっきりと制度やリスクについて説明してくれたので安心感がありました。法令遵守で外国人材を活用していく上で、信頼できる登録支援機関さんとのお付き合いは重要なポイントだと考えています。ありがとうございます。今後、外国人材を活用してどのような組織をつくっていきたいですか?佐々木様:だいぶ外国人メンバーが増えてきたのですが、日本人と外国人を区別するという意識はありません。私たちが大切にしている「利用者様の尊厳を重視して、安全な介護サービスを提供する」という施設の理念に共感してくれる人材を採用し、定着してもらえる体制をつくっていきたいです。