埼玉県鴻巣市で配管工事業を営む株式会社小川商店。地域に根差した経営と働きやすい環境づくりを推進し、日本人社員の確保にも成功しています。今回は、代表取締役の小川様に社員が定着する仕組みづくりや外国人材受け入れの効果についてお伺いしました。国際貢献を目的として受け入れた技能実習生が特定技能に切り替え特定技能外国人を採用することになった背景を教えてください。小川社長:もともとは、2018年にベトナムから技能実習生を1名受け入れたんです。その方が実習3年を満了して、そのまま特定技能に切り替えて働いてくれていました。弊社の場合、人手不足解消というよりも技能実習制度の趣旨である「国際貢献」を主目的として受け入れを始めたんです。私が、ロータリークラブの活動で海外からの留学生の奨学事業に関わっていたこともあり、会社としてもなにかそういった類のことができないかなと考えていたので。その後も、技能実習2期生として1名、3期生として2名受け入れをしています。特定技能からの採用はされていないんですね?小川社長:はい。過去に一度、他社で実習を満了し、ベトナムに帰国された方が特定技能として再来日したいということで3名の面接をしたことはあります。その中の1名の方を採用するつもりでいたのですが、いざ在留資格の許可がおりて来日するというタイミングで、やはり日本に行くのを止めた、ということでなくなりました。そこまで人手が足りないということでもないので、弊社としては問題なかったのですが、準備に手間暇もかかっていますので、それ以来あまり国外からの特定技能採用に良い印象は持っていないです。技能実習制度といっても実際は人材不足解消を目的として活用される会社さんが多い印象ですが、貴社の場合は、実際に技能移転による国際貢献を目指されていたんですね。小川社長:はい。もちろん、建設業界全体として人手不足だというのは理解していますし、弊社にも影響がまったくないというわけではないのですが、現在は、幸い平均年齢も40歳くらいで、社員数も充足しています。紹介だったり一度現場で一緒になった若い方が入社を希望してくれたりで、お金をかけて求人広告を出すみたいなことも特にせず信頼できるメンバーを揃えられています。外国人材を受け入れないと経営が成り立たないというような状況ではないですね。実際に外国人材を受け入れて良かったことはありますか?小川社長:受け入れ側である日本人社員の意識が変わったことです。一例として、ある日本人社員がベトナム語を勉強して、今では簡単なコミュニケーションができるくらいにまでなるなど、異なる文化との交流が生まれることで確実に世界が広がっています。社員の成長や変化というのを私はポジティブなこととして捉えているので、今後も、なにかしらの形で外国人材の受け入れは続けていきたいです。日本人が集まらない会社には外国人材も集まらない貴社で技能実習を満了して特定技能に切り替えられた方のみということで、特定技能になってからは大きな問題もなかったかもしれませんが、一番最初に技能実習生として受け入れた時に大変だったことはありますか?小川社長:正直、あまり苦労した記憶はないんですよね。実習生という認識だったから、日本語力が低いのは織り込み済みでしたし。むしろ弊社での実習期間を通して日本語も技能も身に付けていってほしいという考えでした。実際に、技能実習1期生が特定技能になる頃には日本語での業務上のコミュニケーションが問題なく取れるようになっていましたし、プライベートで日本人社員と一緒に遊びに行くなんてことも多かったです。彼は、日本の自動車免許も取得して、最終的にとても戦力になってくれました。ただ、日本語力は人によってかなり差があります。2期生は、あまり積極的に話すタイプでもなく、1期生ほどは伸びなかったです。3期生の2名も少し日本語力に差がありますね。ただ、いずれも仕事は問題なく頑張ってくれています。外国人材側の意識も重要ですが、受け入れる側の覚悟次第で成否は大きく変わってくると思います。弊社もやはり当初は、日本人社員と外国人材の間でコミュニケーショントラブルが起こることはありました。人間関係の問題ですね。特に、昔気質の職人さんは厳しい方も多くて、外国人材から現場を分けてほしいなんていう相談を受けたこともありました。問題が起こった際は、どのように対処されていったのですか?小川社長:私と当該日本人社員と外国人材の3者面談です。こと人間関係に関しては、特効薬はないので地道な対応あるのみです。ただ、一番最初に受け入れて6年も経った今では、社内全体の意識も変わってきたのを感じます。地道な話し合いが功を奏したのと、社員旅行でベトナムに行って、1期生の親御さんとお姉さんに会ったのがきっかけとしては大きいかもしれません。外国人材の背景を知れたことで日本人社員の意識が変わったのだと思います。特定技能も技能実習も事務手続きが煩雑という声をよく聞きますが、苦労はありませんでしたか?小川社長:確かに少し面倒くさいですが、もともと建設業は書類が多いので、あまり課題には感じません。登録支援機関や監理団体の方もサポートしてくれますし、事務手続きの煩雑さが、特定技能外国人や技能実習生の受け入れにあたってのハードルになることはないですね。お話をお聞きすると、外国人材に限らず日本人社員の採用、定着にも成功されているという印象を受けますが、働きやすい環境構築のために意識されていることを教えてください。小川社長:働きやすさという意味では、土日を完全に休みにする、地場の現場しか対応しないようにして移動時間を短くする、男性社員も育休が取得しやすい雰囲気をつくる、といったことを実施しています。私の父の代から「社員は家族」という考え方があったので、シンプルに家族には幸せになってほしいなと思って取り組んでいます。あと、スクールの費用を会社が負担して、積極的に資格を取得してもらうようにしていますね。社員がスキルアップすることで会社の実力が底上げされているというのは実感しています。過去、資格取得後すぐに退職してしまう事例もありましたが、だからといって取り組みを止めようと思ったことはありません。社員に投資することが最終的に会社の成長にも繋がるのは間違いありませんから。定着施策としては、外国人材に対してのみ特別な取り組みを実施するという考え方ではなく、国籍に関係なくすべての社員が働きやすい環境になるように意識しています。日本人が働きたくない会社では当然、外国人材だって働きたくないですよね。外国人材なら集まるなんていう考えでは優秀な人材は採用できないと思っています。