静岡県を中心に総合居酒屋「串特急」などを展開し、地域密着型の飲食サービスを提供している株式会社フーディアム・インターナショナル。首都圏にも出店を広げ、多店舗展開に伴う人材確保が課題となっていました。同社の企画本部では、商品開発から店舗運営、人材採用に至るまで幅広い業務を担っており、人材戦略の一環として特定技能制度の活用にも取り組んでいます。今回は、特定技能活用に至るまでの経緯や今後の展望について、首都圏事業本部を統括し企画全体をリードする同社取締役の山田誠様と、企画開発部で商品や人材に関する企画業務を担う吉成玲子様にお話を伺いました。外国籍のスタッフに長期的に働いてもらうために特定技能の活用を検討特定技能外国人の受け入れを検討された背景やきっかけを教えてください。山田様:当社は外食事業を展開しており、店舗運営において現場スタッフの存在は欠かせません。しかし、ここ数年で人材の確保が非常に困難になってきました。求人を出しても応募が集まらず、採用できたとしても定着しない。さらにスタッフの高齢化も進み、店舗を安定的に運営すること自体が次第に難しくなっていくのを感じていました。特に深刻だったのが、シフト体制の維持です。本来であれば、どの店舗にも2名の正社員を配置しておきたいと考えています。そうでなければ、時間帯によっては正社員が誰もいないという状況が生まれてしまい、店舗運営やスタッフ管理に大きな支障が出てしまうためです。しかし現実には、それだけの人員を日本人だけで確保するのは困難な状況が続いていました。人手が足りない状態で営業せざるを得ない日もあり、残ったスタッフへの負担が大きくなっていたんです。吉成様:パートやアルバイトの採用コストも上がってきていて、決して安くない金額をかけても「良い人が来ない」ことが増えていました。既存の採用手法では限界があると感じたタイミングで、注目したのが特定技能制度です。留学生のアルバイトは以前から多数在籍しており、まじめで責任感のある人が多い印象を持っています。ただ、彼らの多くは卒業後に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格での就職を希望する傾向があり、当社にそのまま残ってもらうことが難しいという現実もあります。そのため、仮に社内で高く評価していても、留学生アルバイトをそのまま自社の正社員として受け入れるには制度的な壁がありました。そういった背景から、外国籍のスタッフが中長期的に働ける制度として特定技能への期待が高まりました。当社のサービスを選定いただいた際の比較検討の流れを教えてください。山田様:制度に興味を持ち始めた頃から、電話営業や資料の送付が一気に増えました。数ある企業の中から、自社のニーズに合ったパートナーを選ぶことは簡単ではありませんでした。まずは4〜5社に絞ってヒアリングを実施し、それぞれのサポート体制や費用感、対応の丁寧さなどを比較しました。最終的に、直接面接に対応してもらえるかどうかと営業担当とのコミュニケーションのしやすさ、そしてコスト面のバランスを考慮して、御社を含めた2社に絞り込みました。吉成様:営業担当の方の対応が非常に早く、こちらの質問にも丁寧に答えてくださったのが好印象でした。制度の概要から実際の流れまで、初めての我々にもわかりやすく説明していただき、安心感がありました。現場と連携を取りながら進める上で、「信頼できるかどうか」は非常に大事なポイントだったと思います。また、人材の紹介のスピードが早かったのも印象的です。実際に受け入れた特定技能外国人の働きぶりについて、どのように感じていますか?山田様:非常にまじめで、丁寧な仕事ぶりです。遅刻や欠勤もなく、与えられた仕事には責任を持って取り組んでくれます。何より、仕事に対する「ハングリーさ」があります。生活のため、自分の将来のために「この職場で頑張るんだ」という思いを強く感じますし、それが態度にも出ている。そうした意欲の高さは、周囲にも良い刺激になっていますね。御社から紹介いただいたネパール人スタッフは、最初は業務フローなどに戸惑っている様子もありましたが、今ではしっかりと慣れ、積極的に関わってくれています。吉成様:ひとつひとつの作業に対して丁寧で、周囲に質問しながら覚えようとする姿勢が印象的です。飲食の現場はどうしてもスピードを求められる場面がありますが、焦らず確実にこなす力は現場にとって大きな安心材料になっています。特定技能外国人を受け入れたことで、どのような効果や変化がありましたか?吉成様:一番の効果は、やはり人手不足が解消されたことです。とくにランチやディナーといったピークタイムに安定して人を配置できるようになったことで、サービスレベルを落とさずに営業できています。山田様:ただ人手を増やすだけでなく、組織としての成長にもつながっている。そういう意味で、想像以上に良い効果が出ていると思っています。とはいえ、現場での評価は日々の積み重ねが重要ですし、本当にしっかり定着できているかどうかは、やはり1年ほど経ってみないと判断できない部分もあると思います。その意味でも、今は“育てながら見ていく”という姿勢で臨んでいます。キッチンからホールでの接客まで幅広い業務を担当できるように段階的に教育をしていく特定技能外国人の受け入れにあたって、大変だったことがあれば教えてください。吉成様:まず一つ目は、審査や手続きに思った以上に時間がかかったことです。書類の準備、在留資格の申請など、入社までに数ヶ月単位の時間がかかりました。初めての制度ということもあり、社内でも手探りの部分が多く、スケジューリングが難しかったです。ただ、その点については御社のサポートが非常に心強かったです。各ステップで丁寧に進捗を共有いただき、「今どこまで進んでいて、あと何が必要か」が常に見える状態だったので、不安なく進めることができました。もう一つは、日本語力です。期待していた水準よりも少し低い印象はありましたが、それは面接時点である程度把握しており、織り込み済みでした。そのため、受け入れ側でも「最初は簡単な作業からスタートする」「伝えるときはゆっくり丁寧に話す」など、事前に対応を準備できていたので大きな混乱はありませんでした。もともと店舗には、留学生のアルバイトスタッフも多数いましたので。本人たちも非常に前向きで、日々の業務の中でどんどん日本語を吸収していっています。山田様:単に“教える側・教わる側”という関係ではなく、お互いに歩み寄ることで、チームとしての一体感も生まれてきていると感じます。今後は、キッチン業務だけでなく、ホールでの接客も安心して任せられるように、段階的に教育の幅を広げていきたいと考えています。今後の人材活用や組織づくりについて、展望をお聞かせください。山田様:外食業界は、今後ますます厳しい局面を迎えると思っています。人口減少、少子高齢化、物価高騰…。既存の店舗を維持するだけでも簡単ではなくなってきている中で、優秀な人材をどう確保し、育てていくかが鍵です。その中で、特定技能は非常に有効な選択肢だと確信しています。意欲的で責任感のある人材が、現場を支えてくれることは本当にありがたいです。吉成様:今後は、現場だけでなく本部人材としての外国籍の方の登用も視野に入れています。バックオフィス業務やマネジメントの領域でも、多様な視点を持つ人材が加わることで、会社全体がより柔軟に変化へ対応できるようになると考えています。「一緒に働く仲間」として、多様な人材が活躍できる職場環境を整え、定着支援・スキルアップの制度も整備していく予定です。