茨城県取手市で公共の下水道工事を手掛ける上田建設株式会社。現在、5名のベトナム人が在留資格「特定技能」で働いています。当時は、そこまで人手不足に悩んでいなかったという同社が外国人材の受け入れに踏み切った理由はなんなのか?課題や受け入れの効果について田中社長にお話を伺いました。日本人労働者が高齢化する中で、若くてエネルギッシュな人材の確保は必須現在の組織体制を教えてください。田中社長:社員は、事務員1名、営業1名、主任技術者4名、作業員12名で構成されています。12名の作業員のうち、特定技能のベトナム人技能者が5名を占めています。平均年齢は、ベトナム人材が引き下げてくれていて40代半ばくらいです。日本人だけだと50代後半、と高齢化が進んでいます。これでも他の建設会社さんからは、「若い人材が多いね」と言われるのですが、私の中では、若手不足という感覚を強く持っております。ハローワークやホームページでも求人を出していますが、若手作業員の応募はほとんどなく、社員からの紹介でなんとか日本人の若手は確保できている状況です。特定技能外国人を受け入れることにしたきっかけを教えてください。田中社長:実は、人手不足が理由ではありませんでした。もちろん、建設業において今後ますます人手不足が深刻化するのは間違いないですが、当時、そこまで人員が足りない、ということはなかったんです。もともと、2018年から技能実習生を受け入れていたのですが、それも、当社社員の知り合いの建設会社さんから話を聞いたのがきっかけでした。真面目で勤勉、技術習得も早いということで2名受け入れをしてみたら素晴らしい方々でした。その2名が特定技能に切り替えて継続して当社で働きたいということで、特定技能の活用がスタートした、という流れです。彼らの活躍には目を見張るものがありましたので、他社さんで技能実習を満了された3名の方も新しく採用して、現在の体制に至っています。実際に受け入れた人材の働きぶりはいかがですか?田中社長:日本語力や技術力は個人差がありますが、皆さんとても素晴らしい活躍をしてくれています。真面目で現場での責任感も強く、他の社員に良い刺激を与えてくれています。今では現場に欠かせない存在になっていますね。働きぶりに満足されているとのことですが、自社にマッチした人材を採用するための工夫はありますか?田中社長:採用基準としては経験を最も重視しています。面接時は、ベトナム人社員にも同席してもらって、仕事内容や職場環境など当社の特徴を説明してもらっています。ベトナム人同士で話してもらうことで正確に情報を伝えられるのと、求職者の方の本来の性格や能力が見えやすくなるというメリットがあります。外国人材受け入れの一番の効果はなんでしょうか?田中社長:若手労働力の確保ですね。日本人労働者が高齢化する中で、若くてエネルギッシュな彼らが、厳しい環境でも機敏に動いてくれ、責任感を持って仕事に取り組んでくれるため、現場の生産性が向上しました。最初は、外国人に対する偏見や先入観、異文化コミュニケーションの大変さを感じている日本人社員もいるようでしたが、一緒に仕事をする時間が増えるにつれて仲良くなっていったようです。ベトナム人社員が入ってきてくれたことで、社内が明るくなったようにも感じています。言葉の壁はあったが、仕事をともにすることで信頼関係が生まれる外国人材受け入れ時の苦労はありますか?田中社長:一番は言葉の壁です。入社当初は、翻訳機等を活用しながらなんとかコミュニケーションを円滑にしていました。ただ、建設業に特有の専門用語は日本語の教科書でも学ばないし翻訳機でも対応していないので苦労しました。例えば、資材を運ぶ手押しの一輪車のことを「ネコ」というのですが、翻訳機に「ネコ」といってもベトナム語で適切には翻訳されませんよね?なので、道具などは実際に写真に撮って覚えていってもらいました。現場で安全に作業をするためにも教育には力を入れています。また、今では貴重な戦力となっている人材でも、最初技能実習で働いている時は、仕事で怒られたことに納得がいかない、といって問題になることが多々ありました。怒られ慣れていないというのもあったのかと思います。そういった時は、注意をした日本人社員と実習生、そして通訳の方を交えて、なぜ注意されたのかをしっかり説明する、といったことを地道に繰り返していました。最初は、手間がかかって大変そうですね。今では貴重な戦力とのことですが、変わったきっかけがあったのでしょうか?田中社長:どこかで突然変わったというよりも、地道に面談を繰り返したのと、あとはやはり、長く一緒に働くことで自然と信頼関係が築かれていったのが大きいですね。真面目に働く者同士で通じ合うものがあるんだと思います。今では、ベトナム人材が現場監督に業務について指摘をして現場監督も笑顔でそれを受け入れる、というような光景が見られるようになりました。特定技能になった今では、あまり問題も起きないかと思いますが、登録支援機関は必要でしょうか?田中社長:はい。人材と企業の橋渡しを丁寧にしていただけることに意義を感じます。そういった意味でリフトさんは、多言語対応メンバーの方がきめ細やかに管理してくれるので、とても安心です。玉掛けの資格や自動車免許もリフトさんに協力していただいて取得ができました。また、特定技能求人の際も候補者の方を迅速に集めてくださって助かりました。ありがとうございます。最後に、今後、特定技能外国人を活用してどのような組織をつくっていきたいかお聞かせください。田中社長:ベトナム人のキャリアアップを支援することで、個々のモチベーションを向上させるとともに、組織全体の成長を目指していきます。現在、日本人のマネジメント職の減少に伴い、元請けの仕事が減少し、下請けの仕事が増える傾向があるんです。そのため、手元作業を担える人材を確保しつつも、マネジメント職を増やし、元請けの仕事も維持していきたいですね。ただ、ベトナム人材がマネジメント職に就くためには、技能向上だけでは不十分です。顧客との円滑なコミュニケーションを通じて、安心して仕事を任せられる信頼感を得ることが必要です。しかし、現状の日本語力ではその実現が難しいため、さらなる日本語教育の強化やコミュニケーション能力の向上支援の必要性を感じています。また、手元作業に限らず、重機オペレーターとしても活躍できる機会を提供し、幅広いスキルを持つオールマイティな人材を増やすことで、会社全体の生産性向上を図りたいです。多様性を持つチームを育成し、外国人材と日本人社員がともに成長する環境を整えることが目標ですね。